弱者

「負け」という烙印を押されながら泳いだ。
必死でそれから逃げようとしたが、負けた。

水泳は自分との戦いです。
常に自分と見つめ合い、限界というところへたどり着こうとあがく。
「もうあかん、しんどい」
思うのは勝手。
でも負けたらあかん。
今日はペース練習。
気持ちよく泳いだタイムとダッシュタイムとの差を均等に分割して、そのタイムを目標にして泳いでゆく。
徐々にタイムはあがっていく。
もちろんしんどい練習。
ペースを守ることが苦手なぼくにとってはなおさらのこと。
徐々に制限タイムはあがってゆく、けれどもぼくのタイムはあがらない。
アカン、負けたらアカン。
もっと、もっとタイムをあげな。
でも、あがらへん。
「負け」
負けたんや。
オレは負けたんや。
名誉挽回。
次の練習で頑張って名誉挽回や。
そう思って泳ぐ。
でも、ええタイムはでんかった。
もう一度おされる。
「負け」
徹底的に負けた。
なんて弱いんや。
悔しくて悔しくて。
全身が震え上がった。
唇を噛み締めて、拳を握った。
それでも涙はでてこなかった。
この気持ちを外に追い出す方法はないのだろうか。

負け